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マーケット確立した欧米に続くのか ―投資家の期待高まる学生寮投資【2】


女性の進学率向上や留学生の増加を背景に、注目度が高まってきた学生寮。大手デベロッパーや外資企業などの新規参入が進む中、国内外の投資家が新たな投資対象として目を向け始めている。先行する欧米のように、今後日本でも学生寮投資は進んでいくのか、レポートする。

大手デベや外資が新規開発に続々参入
ファンド活用した開発の「潜在ニーズは高い」

日本における学生寮投資は、これまでJリートを中心に行われてきた。レジ特化型リートや総合型リートなどが毎年少しずつ組み込んでおり、現在9リートが保有、資産総額は515億円に達している(都市未来総合研究所調べ)。
ただ、欧米のように学生寮に特化したリートの組成や海外投資家による大型投資の事例はなく、これからという段階だ。

マーケット確立した欧米に続くのか ―投資家の期待高まる学生寮投資

既存の学生寮は老朽化が進み、投資対象になるような既存物件は少ない。一方で女性の進学率向上や留学生増加により、質の高い学生寮のニーズは年々高まっている。それだけに投資マーケットの拡大は、今後どれだけ新規開発が加速していくかに掛かっているが、この1~2年でその機運は着実に高まってきた。
三井不動産、東急不動産ホールディングス、伊藤忠都市開発が相次いで学生寮の開発に新規参入。さらに、みずほ銀は学生寮の開発型ファンドを100億円規模で、今期中(2019年3月期)を目処に立ち上げる。
外資でもGSAとスターアジアグループが学生寮の開発・運営を行うための業務提携を結び、折半出資でGSAスターアジアを設立。今年2月に第1号物件を東京文京区白山で竣工させた。各社とも、共用部が充実したシェアハウスのような学生寮を志向している。

みずほ銀は1年前から、国公立大学や私立大学へのマーケティングを開始。
国からの補助金が年々減少していく中、「どの大学も民間の資金とノウハウを取り入れて、保有不動産で収益化を図っていきたいと考えている」(高田氏)。
とくに国立大は、保有する土地を他者に貸与できるようにした昨年4月の国立大学法人法改正が保有不動産の有効活用を考える大きなきっかけになった。喫緊の課題である学生寮の整備は、その有効活用策として優先度は高い。ただ、学生寮以外も含め有効活用のあらゆる可能性を検討しているため、具体化に時間が掛かっていることも事実だ。

学生寮を整備する場合、大学側は基本的に地主として土地を事業者に賃貸し、事業者が学生寮を建設・運営するスキームが基本。
大学周辺は事業者が土地から取得する場合も想定される。国立大学は長期資金の借入れには大臣認可がいること、私立大学は負債比率の上昇が大学運営の制約となる懸念があることから、自らの資金拠出は避けたいのが本音。その点で、みずほ銀は「ファンド活用の潜在的ニーズは高い」と見る。

みずほ銀はファンドを通じて1棟当たり200戸・20億円規模の学生寮を、全国で10棟整備する目標を掲げる。留学生と日本人学生の混住型を基本にしながら、一般レジや商業店舗を組み合わせた複合型も視野に入れる。
ファンドのエクイティは、オペレーターやゼネコンなどからの追加出資も受け入れる方針。想定利回りは5~6%。ファンドの出口ではマーケット環境に応じてリート組成も検討する。

学生寮投資の魅力は、大きく2つある。
1つは景気変動の影響を受けにくいこと。学生寮の入居率に影響する大学進学者数は、景気が悪くなったとしても半減するようなことはなく、また賃貸借契約はほとんどが固定賃料であり、キャッシュフローは安定している。
もう1つは利回り。レジよりも50bp程度高いNOI利回りが期待できる。都市未来総研の平山重雄主席研究員は学生寮を「堅実でディフェンシブなアセットタイプ」と評した上で、「大学を巡る政府の行政施策や考え方の変化は注視していく必要がある」と指摘する。キャッシュフローの源泉が、大学との契約に依るところが大きいためだ。

学生寮の投資はまだ端緒についたばかり。データセンターやセルフストレージと並び、新たなアセットタイプとして拡大・定着していくか、今後さらに注目を集めそうだ。

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