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投資口価値向上に投資家は歓迎――相次ぐ手元資金活用した「Jリート初」①


毎月分配型投資信託からの資金流出や、物件価格の高騰とCapレートのさらなる低下は、常に成長を求められるJリートの運営を難しくしている。これまで通りの成長戦略では行き詰まりも否めない環境下、昨年は手元資金を活用したJリート初の取り組みが相次いで実施された。自己投資口の取得、メザニン投資、病院投資がそれだ。実施の背景や狙い、投資家評価、今後の展開についてレポートする。

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4リートが自己投資口取得し価格20%上昇も即効性ある「金融的な手法」を投資家が好感

自己投資口の取得は、市場に流通している投資口を買い償却する取り組み。1口当たり分配金の増加やNAV(時価ベース純資産)の改善に効果がある。NAV倍率が1倍以下のリートが実施すれば、割安であることを投資家に訴求できる。2013 年に行われた投資法人法制の見直しの一環として、実質解禁された。昨年6月、インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(IOJ)がJリート初の実施に踏み切った後、いちごホテルリート投資法人(IHR)、日本リテールファンド投資法人(JRF)、グローバル・ワン投資法人(GOR)が続いた。

自己投資口の取得発表日から直近(1月26日)までの間、この4リートの投資口価格の騰落率と、同期間における東証リート指数の騰落率との比較を見ると、IOJが+19.4%/+18.7P、IHR が+16.9%/+10.8P、JRFが+7.4%/+ 0.9P、GORが+11.8%/+3.9P。各リートとも投資口価格が上昇し、東証リート指数からアウトパフォームするほど投資家から好感された。NAV倍率も、1倍付近まで修正されている。

みずほ証券・市場情報戦略部の石澤卓志上級研究員は自己投資口の取得について、「主に金融系スポンサーのリートが、金融的な発想に基づき即効性のある金融的手法を使った」と指摘する。これを裏返せば、中期的に資産価値の上昇を見込んだ物件の取得や保有物件のパフォーマンス改善などの「不動産的手法が必ずしも投資家から評価されてこなかったため実施に踏み切ったとも捉えられる」。リート投資家の4割程度を占める金融機関は、リートの収益源が不動産にあっても、結果的に金融的な配慮を求める傾向にある。そのため今回の取り組みは評価されやすく、結果として投資口価格の上昇につながった面もある。

IOJの運用会社であるインベスコ・グローバル・リアルエステート・アジア・パシフィック・インクは、投資口価格が上場来の底値圏にあった2017 年4月期初めの2016年11月頃から、投資口価格の改善を図る取り組みの一環として自己投資口取得の検討を始めた。同社の峯村悠吾ファンドマネージャーは「一口当たり分配金や一口当たり純資産価格が上昇するなど、投資家が経済的メリットを得られるかどうかが大きなポイント」と話す。ただ、Jリートではまだ先行事例がなかったことから、金融庁や東京証券取引所に対しては、自己投資口取得に伴い懸念されるリスクへの対応をきっちり固め、その上で丁寧な説明に努めた。

たとえばインサイダー取引のリスクに対しては、決算発表時に自己投資口取得の決定を発表し、投資家とリートの間で最も情報の非対称性が少ない時に実行するよう配慮。また、株価操縦リスクについては、証券会社と取引一任契約を締結。加えて、証券会社にAIによるアルゴリズム取引を通じて毎日のVWAP(売買高加重平均価格)より少しでも値が下がった時に自動的に投資口を買い入れるよう依頼し、リート側の恣意的な取得を排除した。同時に1口でも安く、できるだけ多くの投資口を買い取り投資口の取得効果の最大化も狙った。

結果的に、約8 億円の手元資金で発行済投資口総数の0.94%を取得した。投資家の反応は国内外ともに「非常に良かった」(峯村氏)。とくに海外投資家の間ではここ2 年ほど、日本の不動産セクター全体について自己株買いの注目度が高まっており、そうした中での先行実施が「大絶賛」につながった。国内投資家は取得実施から半年が経過し、上昇し始めた投資口価格の推移を見てポジティブな評価が定まってきた。

IOJ は投資口価格の向上と安定を、最大の経営目標に掲げている。その目標達成に向け今後も、「NAV倍率が1 倍以下の割安な状態で、手元資金が10 億円以上あれば常に実施を検討していく」構えだ。

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