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相対評価で投資家を動かす ―リスク回避志向の資金流入進むレジ【2】


投資家が、レジ(賃貸住宅)への積極的な投資姿勢を強めている。不透明感が増す不動産マーケットを鑑み、賃貸需給が良好でリスク耐性が強いとされるレジを再評価。外資系ファンドや不動産投資に着手し始めた国内のコア投資家を中心に、ポートフォリオに積極的に組み込もうとする動きが目立つようになった。今なぜ、レジ投資なのか。その背景と投資環境を探る。

デベロッパーの開発優先度低く供給抑えられる
立地を最優先、個人系や事業会社の案件に

新たな投資家の参入拡大と同時に、既存のレジ投資家の買い増し姿勢も強まっている。
一方、3大都市圏や地方中核都市において、機関投資家やファンドが組み入れたがるような好立地・高品質のレジの新規供給は少ない。デベロッパーからすると駅近くの好立地であれば、分譲マンションやホテルの方が収益性が高いため、わざわざレジを開発するインセンティブがない。結果として供給は抑えられた状態が続き、リート等が保有する既存物件の稼働率は97%前後の高い水準で推移、賃料も小幅ながら上昇傾向にある。

外資系ファンドのウェストブルック・パートナーズが430億円で取得した「河田町コンフォガーデン」 外資系ファンドのウェストブルック・パートナーズが
430億円で取得した「河田町コンフォガーデン」

マーケットに流通するレジ物件の情報量は確実に減っている。一定の質が確保されている目ぼしい物件はファンドなどに大方買われて一回りし、すぐに売却する状況にないことから「テーブルの下に隠されている」(アドバンス・レジデンス投資法人の資産運用会社、ADインベストメント・マネジメント 髙坂社長)。
レジ特化型私募リートである大和証券レジデンシャル・プライベート投資法人を運用する、大和リアル・エステート・アセット・マネジメントの阿部淳・投資企画部兼投資オリジネーション部副部長も「買いにくい状態が続いている。たまに築浅の稼働物件が出てくると入札を通じて、NOI利回りが4%を切る非常に高い価格での取引になってしまう」と厳しい取得環境を指摘する。

リートの場合、上場にしろ私募にしろ、既存ポートフォリオを毀損するような水準で取得はできない。現状、リートの目線は4%半ばから後半が基本。マーケットの実質取引利回りとは50~ 100bpも乖離が生まれていると言える。 こうした厳しい状況下、リートはどのような外部成長の考え方を持っているのだろうか。ADRは「スポンサーの伊藤忠グループが開発・保有している物件を、投資家にとっていかにフェイバーな価格で取得できるかをポイントにして厳選投資する」スタンス。
スポンサーは竣工済み物件と2018年竣工予定の物件で約500億円程度抱えている。このほか、比較的マーケットにさらされていない個人の資産管理会社が保有する物件は、検討対象になり得る。立地を最優先にしながら、「本当に人が住むエリアかどうか」肌感覚の目利きを大事にしていく方針だ。

デベロッパーをスポンサーに持たない大和リアル・エステートは目下、「ある程度高値で売却できればいい」と考えがちな個人や不動産業が本業ではない事業会社が持つ物件を狙っている。
そこで大事にしているポイントが、情報提供を受ける仲介会社との強いリレーション。「情報をもらったらすぐに結論を出す。一旦買うと決めたらデューデリジェンスで指摘事項が出てきてもうまく処理し、できる限り早いスピード感を持って決済まで持っていく」(阿部氏)よう努める。
仲介会社に、決済の蓋然性が高く、また情報を持っていきたくなる買主との認識を持ってもらうためだ。開発案件は工事中に交渉し、フォワードコミットで確保する取り組みもしている。同社の私募リートは前期(2017年8月期)に資産規模1000億円を達成し、新たな中長期目標として1500億円を掲げた。
ただ、当面は高値で買いにくい状況が続くと見込まれることから、無理せず東京圏を中心とした厳選投資をしていく。

リーマン・ショック後、レジは結局キャピタルバリューもパフォーマンスも最も安定していた。先を見通しにくいマーケット環境下、レジの再評価と積極投資の流れはさらに強まるかもしれない。

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