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昨今、リノベーションという言葉をよく耳にします。建物の活用策として注目を浴びているスキームですが、近ごろではその意味が一人歩きし、不動産賃貸の悩みを解決する決定打のような意味合いで使われているようです。 そもそもリノベーションとは、既存物件に新たな機能を付加して価値を向上させることを指します。例えば古民家をカフェにしたり、倉庫をオフィスにしたり、あるいは賃貸住宅の間取りを変更して大空間のリビングを設けたりといった場合はリノベーションと呼べるでしょう。一方、キッチンを最新の機器に変更しただけであれば、機能の付加ではなく既存機能の更新にあたりますので、リフォームと呼ぶべきでしょう。改装=リノベーションという意味に捉えられているかもしれませんが、必ずしもそうではないのです。
賃貸物件の改装でいえば、従来よりも賃料アップが狙えるのであればリノベーション、賃料維持のための改装はリフォームと考えればしっくりくるかもしれません。新たに機能を付加するのはもちろんですが、肝心なのはそれによる価値の向上です。賃料はその基準と考えていいでしょう。極端な例かもしれませんが、例え壁紙を変えただけであっても、その壁紙によって建物に新たな機能が付加され、しかも賃料がアップできるのであれば、それはリノベーションと呼ぶことができるのです。 さてこのリノベーションという言葉が浸透するとともに、どんな物件でもリノベーションすれば活性化できるというイメージができつつあるようです。確かに本来の意味でリノベーションされた建物は意匠性も高く個性的で、魅力的に映ります。しかし立地に難のある建物を店舗に改装しても集客に苦労するだけですし、投資した分かえって収益性が下がる可能性もあります。場合によっては、改装するより有益な活用策があるかもしれません。本来の意味でのリノベーションとは、建物の状態や立地、地域のニーズ、費用対効果などを総合的に判断して行われるべきもので、空き物件の活用や収益力を強化するための選択肢のひとつにすぎないのです。そう考えれば、リノベーションは決して万能ではないことがわかります。 リノベーションを専門とする業者も増えていますが、これも見極めが必要です。業者にとっては、改装が目的なのかもしれません。しかしオーナーにとっての目的は建物の活性化であり、収益力の強化です。リノベーションすべきか否か、どうリノベーションすべきか。その最終判断は、結局のところオーナーが下す以外にありません。その判断力をつけておくことも、良いオーナーとしての条件のひとつなのです。 オーナーの正しい判断のもとにリノベーションされれば、建物はきっと素敵に生まれ変わるでしょう。
不動産ビジネスライター 久保純一 氏 不動産専門紙などで専属記者として、不動産ビジネスの最前線を長年にわたり取材。徹底した現場主義による、綿密な取材に基づいた記事には定評がある。独立後、不動産ビジネスにまつわる豊富な知識、経験を元に、現在は不動産経営者向け専門紙、物流不動産ビジネス誌、経済誌、専門サイトなど幅広いフィールドで活躍中。
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