トランクルームマーケット情報

日本のセルフストレージ産業 -概要と米市場との比較-

筆者:スティーブ・スポーン


ラスベガスで最近開催されたセルフストレージの会議とトレードショーを訪れて分かったのは、日本のセルフストレージ業界についてほとんど何も知られていないということでした。驚くようなことではありません。アメリカのストレージ業者の中で、日本に進出しているところは1社もないのです。しかしながら、日本の状況についての話になるといつも、思いのほか興味や関心が高いことにびっくりしました。

また多くのアメリカのストレージ業者が抱えている課題が、日本の業者が直面しているものと共通していることも、面白い発見でした:

  • 製品にもさまざまなグレードがあることに対する消費者の認識不足
  • 信頼できる統計データの全般的な欠如
  • レンタル料金の管理と最適化
  • 増え続けるオンラインメディアの利用を含め、さまざまな広告手段の有効性
  • 効率性と最終的には収益性を高めるテクノロジーの活用

おそらく、日本とアメリカの市場は、私たちが思っている以上に似ているのです。ここから先は、日本のセルフストレージの概要と、日本とアメリカの市場の比較です。

市場の規模、浸透率そして成長

世界のほかのセルフストレージ市場と比較すると、日本の市場は収益ではかなりの規模になっていますが、浸透率で見ると比較的若く、発展途上にあります(下記の表を参照)。

地域 収益(米ドル) 市場浸透率
アメリカ 220億ドル 10%
カナダ 10億ドル 4%
オーストラリア/ニュージーランド 6億ドル 4%
ヨーロッパ 5億ドル <0.5%
イギリス 5億ドル 1%
日本 2億6000万ドル 0.2%
出典:Selfstorage.org, Selfstorage.com.au, FEDESSA.org, 日本セルフストレージ協会, CSSA.ca, SSAUK.com

この10年間、ストレージの供給量は増加してきており、キュラーズが実施した2010年国内セルフストレージ供給調査や、他のセルフストレージ大手が公開している情報によれば、年間約10%の勢いで成長し続けている状態です。成長に拍車をかけているのは、ストレージ施設の品質の向上と、その高品質な施設に対する認識の高まりです。2008年第3四半期から2010年第3四半期までに、ユニットの供給量は19%増加しました。以下の表に記載の上位5社が市場の60%を占めています。

日本のセルフストレージ事業者(会社名) 潜在総収益(米ドル)* 施設数 ユニット数
キュラーズ 5000万ドル 36 22,000
エリアリンク(ハローストレージ) 4000万ドル 210 15,000
ライゼボックス 3000万ドル 340 20,000
加瀬倉庫 2000万ドル 170 9,000
寺田倉庫 1500万ドル 15 5,000
その他(200社) 1億500万ドル 900 52,000
*稼働率90%とした場合の、全ユニットの定価の総額
出典:キュラーズが実施した2010年日本セルフストレージ供給調査、他のセルフストレージ大手による公開情報

業界のライフサイクルという観点からは、2011年の日本のストレージ市場の段階を、1970年のアメリカのストレージ市場のそれと比較するのが有効かもしれません。具体的に言うと、当時のアメリカの浸透率は0.5%以下で、おそらく今日の日本の浸透率(0.2%)を少し上回る程度だったでしょう。日本の成長率は、40年前のアメリカの状態とよく似ていますが、果たして浸透率がアメリカのレベルに近づくかはまだ分かりません。

ストレージ製品とその用途の基本的性質は、驚くことではありませんが、日本とアメリカはよく似ています。すなわち、個人の所有物を家や会社以外で収納するための、月極めで賃貸できるスペースということです。しかしながら、製品やビジネスモデルにはいくつか違いがあり、これらは日本市場を理解する上で重要です。

ユニットのサイズと料金

ストレージユニットの平均サイズは、日本は30平方フィート、アメリカでは150平方フィートです。アメリカの平均サイズ10x15フィート(150平方フィート)に対し、日本で特に人気があるのは1畳から2畳です。
サイズが違う主な理由は3つあります。まず、アメリカ人は日本人と比較してかなりの大量消費者であることです。アメリカ人はとにかく買う、そして持っている「モノ」も多いし、モノ自体も大きいと言えます。ふたつ目は住宅の広さです。総務省の2003年住宅・土地統計調査によれば、1世帯あたりの平均居住面積はわずか1,020平方フィートです。東京の場合、住宅はさらに狭くなり、300から500平方フィートしかないことも珍しくありません。居住スペースが限られているために、消費者は自宅の延長やもうひとつのクローゼットとして、20平方フィートのセルフストレージを利用することが多いのです。

そして最後は、一般的に不動産が高価ということもあり、単に日本のレンタル料金がかなり高いということです。さらには、人口が密集している都市部にストレージ施設が多い傾向にあることも料金に影響しています。日本の月額レンタル料金の平均は1平方フィートあたり約6ドルで、これはアメリカの平均額の4倍から6倍です。つまり、日本の消費者の場合、100平方フィートもの大きさのストレージの料金を払う余裕はないというだけのことです。簡単に言うと、日本の消費者にとって、アメリカより狭い居住面積を選択するのも、より小さなストレージユニットを選択するのも、その理由は同じなのです。

ビジネスモデル

日本市場の50%近くを占めるセルフストレージ上位3社は、それぞれ異なるビジネスモデルを展開しています。キュラーズの場合は、活用されていないオフィスビルや、立地を誤ったオフィスビルを購入し、それをセルフストレージ施設に改修するコンバージョンモデルが一般的です。これは、アメリカを含む世界のほかの地域のモデルに最も類似した形で、事業者が資産も所有しています。

エリアリンクについては、活用されていないオフィスビルの1フロアまたは複数フロアをリースして、ストレージユニットを設置し、そのスペースをエンドユーザーにまた貸しするのが一般的なモデルです。都市部の不動産価格が比較的高く、かつ購入の可能性が低いこともあり、このリースモデルは日本では最も普及しているビジネスモデルです。

ライゼは一般的に第3のモデルを展開しています。すなわち、土地の所有者とライゼが組んで、ライゼが2階建てのセルフストレージ施設をその土地に設置し、ライゼが所有者に代わって施設の管理運営を行うモデルです。このモデルは、アメリカの大手数社が提供している第三者管理サービスに似ているかもしれません。大体の数字で言うと、日本で稼働しているストレージの25%は事業者が所有、50%は事業者がリース、そして25%は事業者が管理運営している状態です。

屋内ストレージとコンテナストレージ

前述した日本のセルフストレージ市場統計から外しているのは、海上コンテナや運送用コンテナに類似したものを使って運営している屋外のコンテナストレージです。エリアリンクや加瀬倉庫を含む複数の事業者が、屋内施設ほどの安全性やセキュリティを必要としない企業や消費者に対し、コンテナストレージを提供しています。

コンテナは空閑地に設置されますが、ほとんどの場合郊外となります。ストレージ事業者は、土地所有者から空閑地を賃借してコンテナをまた貸しするか、あるいはコンテナを所有する土地所有者に代わってコンテナの管理運営を行います。

2010年第3四半期の時点で、日本には約2,700のコンテナ施設と、92,000のストレージコンテナがあり、およそ110社(うち数社は屋内ストレージ施設も運営)がそれらを所有または管理運営していました。これらのコンテナの潜在総収益はおよそ1億9千万ドルに達し、これは屋内ストレージ市場の70%に相当します。

ここ数年で、コンテナストレージの成長は著しく減速したように見えますが、それには2つの理由が考えられます。まず、屋内セルフストレージの利点が広く認識されるようになったこと、そしてコンテナがさまざまな建築基準に適合していないことが多いため、ますます厳しい目にさらされるようになっている事実です。加えて、コンテナがある場所の安全性や質について、消費者は悪いイメージを持っていることがほとんどです。屋内セルフストレージ業者の多く(当社を含め)は、このようなコンテナが日本のセルフストレージのイメージに悪影響を与えていると考えています。

日本のセルフストレージ産業は成長を続けており、多くの点でアメリカ市場に似ています。いつの日か、日本の事業者はアメリカの事業者と同様の成功を収めることになるでしょう。日本もアメリカも、共通する課題は多いですが、その一方で輝かしい未来に向かっています。

筆者スティーブ・スポーンは、日本のセルフストレージ最大手であるキュラーズの社長。東京在住4年。
連絡先:sspohn@quraz.com

参考資料(アルファベット順)

  • 総務省:2003年住宅・土地統計調査
  • CSSA.ca [Canada Self Storage Association]
  • FEDESSA.org [Federation of European Self Storage Associations]
  • 日本セルフストレージ協会
  • キュラーズ:2010年日本セルフストレージ供給調査
  • SelfStorage.org [Self Storage Association, U.S. National]
  • SelfStorage.com.au [Self Storage Association of Australasia]
  • SSAUK.com [Self Storage Association of the United Kingdom]

その他の記事

日本国内トランクルーム市場、業界動向レポート

  • X
  • Instagram

ページトップへ