トランクルームマーケット情報

人口・世帯数のマクロトレンドと収納サービスの利用者の拡大

筆者:株式会社矢野経済研究所 菅原 章 氏

人口・世帯数のマクロトレンドは、中長期的に減少トレンド。
それでも、サービス拠点の拡大とともに、利用者も拡大中!
生活者の潜在的な需要に大きな期待。

キュラーズ トランクルーム

人口・世帯数は減少フェーズへ

新聞・テレビ等のニュースでも「少子高齢化」という言葉をよく耳にします。実際にデータでみると次の図表1-1のように人口は減少傾向となっています。 2013年3月31日時点での日本の総人口(外国人を除く)は1億2,639万3,679人(前年比26万6,004人減)となっています(総務省:住民基本台帳人口)。昭和43年の調査開始以来2006年に初めて減少に転じ、2008年と2009年に前年比増となったものの2010年以降4年連続の減少となっています。出生者数の減少、死亡者数の増加が主な要因と考えられます。国立社会保障・人口問題研究所で推計された「日本の将来推計人口(全国推計):2012(平成24)年1月推計(推計ベース人口は2010年国勢調査)」によると、日本の総人口は2012年で1億2,806万人とピークに達し、中位推計値ではこれ以降緩やかに減少局面に入ると予測されています。

<図表1-1 総人口の将来予測(中位推計)>


図表1-1 総人口の将来予測(中位推計)
(国立社会保障・人口問題研究所)

一方、世帯数は、2013年3月31日時点での日本の総世帯数(外国籍のみの世帯を除く)は5,459万4,744世帯(前年比42万3,269世帯増)となっています(総務省:住民基本台帳人口)。国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年が総世帯数のピーク(5,305万世帯)となり、その後減少へ転じると推計されている(図表1-2)。
人口が減るのに、世帯数が増える要因としては、1世帯当たりの人口が減っている、つまり、核家族化が進み、親と子世帯といったファミリー世帯が減少し、更には単独世帯(一人暮らし)が増えていることが要因と考えられます。

<図1. 国内収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)の市場規模推移>


図表1-2 総世帯数の将来推計(家族構成別)
(国立社会保障・人口問題研究所)

変化する人口・世帯

このように、人口は既に減少、世帯数は2020年頃まで微増で推移し、その後減少となっていきますが、切り口を変えると、「増え続ける」と読み解くことができます。
例えば、先程の「少子高齢化」を裏付けるように、子ども(15歳未満)の人口が減少しているが、その一方で65歳以上の高齢者人口は今後も増え続けます。また、1990年の世帯の家族構成比は、47.8%がファミリー世帯(夫婦と子+一人親と子)であったが、2010年には夫婦と子世帯より単独世帯の方が上回り、2025年にはファミリー世帯より単独世帯の方が上回ると予想されています。この二つを掛け合わせると、若年のファミリー世帯が減少し、高齢者の単独世帯(一人暮らし高齢者)が増加することが読み解くことができます。
このように、日々の何気ない生活が日本全体のマクロ経済として読み解くと、大きな転換点に差し掛かっているといえます。

収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)の利用者数は?

それでは、どのくらいの人が収納サービスを利用者しているものでしょうか。
まず、現時点での利用可能な「レンタル収納」と「コンテナ収納」の総数は、2013年6月時点で約8,000ヶ所(トランクルーム含む)、室数(実際に利用できるスペース数)約35.5万室(トランクルームを除く)があるものと推定します(矢野経済研究所調べ)。
したがって、「1室=1契約」としたとき、総室数を総世帯数で計算すると、1世帯あたり0.0066室、つまり約152世帯に1室となります。丁目や番地の大きさにもよりますが、近隣地域で1~2世帯程度が利用しているというのが、現在の「ざっくり」とした利用者数です。
弊社で独自に実施したインターネットを使ったアンケート調査でも、収納サービスを利用したことのある人の出現率は、0.5~1.0%となっていることからも概ね利用率・利用者数のボリューム感は、一致しているといえます。
近年、急激に収納サービスの拠点数が増加するとともに、利用者数も増加傾向にあります。しかし、まだまだ収納サービスそのものの認知不足は否めません。収納サービスの正しい認知・認識の向上により、更なる利用者数の上積みが今後期待できます。

収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)の利用者とは?

次に、どういった人が利用しているのでしょうか。
主要な事業者やアンケート調査からみえてくるものは、ある需要層にマッチしたサービスというものではなく、あらゆる方に利用されているということです。
年齢層も幅広く利用されていて、強いて挙げれば40代・50代の利用率が高い傾向があります。20代、30代の利用率が低いとか、60代以上の利用率が低いといった特異性はあまり見受けられません。また、契約者として判別すると男性が若干多いものの、収納スペースに実際に訪れて利用しているのは女性も多い。したがって、レンタル収納もコンテナ収納も、単純に契約者で判別した場合、一般生活者の利用が多く、老若男女、家族構成も様々な方が利用しているのが現状です。
特徴的なトレンドといえば、施設の立地によって利用者像の傾向の違いが見受けられます。例えば、郊外のコンテナ収納の拠点では、法人契約が都市部に比べて多い傾向が見受けられます。資機材や工具などの倉庫として利用されているものと推測されます。レンタル収納の場合、街中にあるケースが多く、一般の生活者の利用が圧倒的に多い傾向があります。収納されているものも家財が中心と推測されます。

収納サービス(レンタル収納・コンテナ収納・トランクルーム)の潜在需要

人口・世帯数のトレンドでは、中長期的に「減少」トレンドに差し掛かっているのは避けられない事実ではあります。しかし、収納サービスを利用している人の数はまだまだ少なく、中長期的に2倍にも、3倍にもなる可能性を秘めています。そこが、収納サービスが成長市場として期待されるサービスということです。
仮に、隣近所5~6世帯、仲の良い友人達で1室の収納サービスを共同で利用することとなれば、1,000万室の収納サービスが必要となります。それだけで、現在の30倍近い市場が期待できます。「庭に物置があるからいいや」ではなく、大切な荷物を適切な環境下で長期保管する必要があるものから、順次収納サービスを利用することとなれば、更に大きな市場が期待できます。
今はまだ、利用者「待ち」の市場です。収納に困っている人、預けることを必要としている人に収納サービスを「届ける」(物理的にではなく)ことができれば、大きな可能性を秘めている市場といえます。

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