トランクルームマーケット情報

ユニークな土地活用最前線


今回は新しい試みとして、不動産業の中でもあまり知られていない分野を取り上げ、その実態に迫ってみました。皆さんは、トランクルームを利用したことがありますか。名前は聞いたことはあるけれど利用したことはない、よく知らないという方が多いかと思います。新しい土地活用のひとつである、そのトランクルーム業を取材しました。
取材させていただいたのは、オリコン「顧客満足度ランキング」トランクルーム部門において、3年連続総合1位という輝かしい実績を誇る株式会社キュラーズです。代表取締役のスティーブ・スポーン氏自らインタビューに答えていただきました。
(聞き手:一般社団法人 不動産流通経営協会 参事 福岡史生)

御社の創業は2001年と10年ほど前ですが、不動産賃貸業の中で収納施設に特化された理由をお聞かせください。

11 年前、創業者がこの会社を設立し、3年ほど前から私が社長を務めています。創業者は、かねてから日本では品質の高いストレージ、いわゆる収納スペースを提供しているところが無いと思っていました。そこで、このアメリカのストレージ業モデルを日本人向けにカスタマイズして、日本で展開しようと現在のスポンサーに提案しました。そして実験的に開始したところ、最初の2~3物件に関しては短時間で顧客を獲得し、順調に埋まっていったので、もっと物件を増やそうということになりました。

トランクルーム業は、どんな法律のもとに位置づけられるのですか。

トランクルーム業は倉庫業の一つの業態ですが、倉庫業には「寄託を受ける倉庫業」と「寄託を受けない倉庫業」があります。前者は倉庫業法のもとに位置づけられますが、当社は後者の「寄託を受けない倉庫業」となります。スペースをお貸ししますが、預けたものに対しての品質保証の義務はありません。基本はスペースの賃貸借契約となりますが、自社の所有物件の賃貸ですので、宅建の免許は必要ありません。いわゆる大家という立場です。

2002年に第一号店を東京都港区にオープンされましたが、既存のトランクルーム各社とどう差別化を図られましたか。

比較的シンプルなことで、今もそのプランに基づいて営業しています。まずは品質です。特にセキュリティ面、清潔さ、快適に使っていただけるような環境、利便性です。競合会社のほとんどが、こういった基本的なサービスを十分に提供できていません。
例えば、私たちはお客様の利便性を考え、アクセスしやすい場所にあることが重要だと考えています。すべての店舗には、駐車スペースを完備しています。競合会社では、駐車場が無い所が多いと思います。また、利便性が高いということだけではなく、気軽に契約に来店してもらえるようにもしています。そのために、各店舗に現地スタッフを配置し、週に数日から毎日、その現地スタッフが契約業務、お客様へのサービス等を行っています。このようなサービスを提供できる競合会社は、ほとんど無いと思います。
安全性ということでいえば、お客様が実際に建物に入られて、ご自身が契約されているユニットをご利用されるまでに、二重三重のセキュリティが設けられています。システム的なことだけではなく、現地にスタッフがいるということがセキュリティ、安全性の強化に役立っていると思います。また建物全体は、温度のみならず湿度の管理もされています。人に関してのみならず、お預けになる荷物に対しても安全な環境を提供しています。これも競合会社には、あまり見られない特徴かと思います。

利用者からはどう評価されましたか。

第一号店をオープンした時は、顧客よりかなり好意的に評価されたと思います。その結果、第一号店は、大体6ヵ月で埋まりました。
また、過去1年間で6店舗を新規オープンしたのですが、そのうち3店舗はすでにほとんど埋まっています。
また、ここ5週間以内でオープンした3店舗に関しても、すでに20%の稼働率となっています。こういったことを見ましても、創業以来ずっとお客様より高い評価を受け続けていると思われます。

原則として、建物を取得してトランクルーム運営を行う事業方式をとっておられますが、賃借ではなく所有を選択なさっているのは何故ですか。

お客様に供給するサービスをこちらでしっかり管理したいと思っています。そのためには、ビルを所有してしまったほうが管理しやすかったのです。まず、駐車場に車を止めて、契約室へ行って、ユニット(トランクルーム)をご覧いただく。これは、キュラーズのお客様だけが経験されることかと思います。競合会社には、このサービスは難しいと思います。競合会社の場合は、オフィスビルのフロアをリースする形をとっています。キュラーズの場合は、全館管理できていますので、サービスの行き届き方が違うと思います。それには購入という形を取ったほうがよいというのが最初の理由です。ビジネスを続けていく中で、リースということもしています。リースの場合は、原則、全館をリースしています。全館リースしているので、購入しているキュラーズの他の店舗と同じサービスを提供できます。
今後は、「購入」と「リース」をうまくバランスを取りながらビジネスを進めていきたいと考えています。

トランクルーム運営事業で最も大切だと思われている点は何でしょうか。

お客様、消費者の視点からいえば、信頼できるという点だと思います。私どものトランクルームは、お客様のいろいろな目的にご利用いただけるようにしています。ただし、最も重要なことは、安心して、安全な環境のなかで荷物を預けていただけるということです。そういう意味では、「信頼」というものがかなり重要だと思いますし、それが私どもの会社およびブランドというものを支えているのだと思います。トランクルームといえば、屋外にあるコンテナのようなものをイメージされるかもしれません。私どもは、そういったイメージを払拭するためにも、高品質のトランクルームをつくっていかなければならないと思っています。

不動産の取得というと、多額の資金が必要となると思いますが、その調達方法はどうなさっていますか。

ある日本のメガバンクとコーポレイトファイナンスの取引があります。一部はそこからのローン調達による資金です。あとは、私どものスポンサーからの出資です。

今現在、管理している建物は何棟あるのでしょうか。

今、45物件を管理しています。そのうち3件がリース物件です。42店舗は所有しているということです。またその45物件のうち、42店舗がすでにオープン済みです。

42店舗で合計何室(ユニット)でしょうか。

オープン済みの42 店舗ですと、25,000 室(ユニット)あります。45 店舗だと、28,000室(ユニット)になります。

今は、どの地域に建物を保有されていて、今後はどの地域を強化なさりたいですか。

現在、日本の10大都市のうち7都市で店舗を展開していますが、最終的には、10大都市すべてに展開したいと思います。当面7都市の物件をしっかり運営し、そのあと、残り3都市に店舗を広げていきたいと思います。今、半分以上の店舗が東京にありますが、首都圏でもまだまだ広げていく余地はあると考えています。

建物の購入ルートはどちらからですか。

仲介業者との幅広いネットワークがあり、特に我々が取得する物件の特徴をよくわかってくれる仲介業者と一緒にビジネスを展開しています。また他に金融機関から物件の紹介を受けることもあります。

当協会は約300の会員会社で構成されていますが、当協会の会員会社とも付き合いがあるということでしょうか。

はい、ほとんどの会員会社とお付き合いがあると思います。

トランクルームの大きさは平均どれくらいですか。また、平均的なトランクルームを借りる時にかかる費用はどれくらいですか。

サイズには幅があります。1㎡から、大きいものは20㎡くらいです。平均サイズということでいうと、2.5㎡くらいとなります。賃料は、市場・地域等によって差がありますが、月平均で1㎡あたり6,000円~12,000円くらいです。

平均稼働率は何%くらいですか。

今すでにオープンしている店舗に関しては、トータルで80%くらいです。

御社にとっての課題は何ですか。

一番の課題は、やはり適切な物件を探すということです。それに関連していうと、やはり今後は、ストレージという資産ならびにビジネスについて金融機関の方々によりご理解いただき、主に金融機関からの借入金調達により成長していきたいと考えています。
この10 年間の物件取得により、学んだことが多くあります。物件に関しては、どういうタイプのものが欲しい、どういう立地が良いというような具体的な基準はありますが、それに適う物件を発掘し、実際に取得までもっていくことは容易なことではありません。今後は仲介業者、金融機関とのコミュニケーションの機会を増やし、質の良い情報をより多く取得していきたいと考えています。

今後のトランクルーム事業の見通しについてお話しください。

日本におけるトランクルーム事業の調査を年ほど行っていますが、毎年利用率は10%ずつ増加しています。私たちはこの10%の成長は、少なくともこの20~30年は続くと思っています。その理由は、アメリカの市場では毎年10%の成長が40年間続き、そして今アメリカでは、10世帯に1世帯というとても大きなマーケットになっています。日本は、アメリカに比べると、トランクルームビジネスの進捗が30年遅れていると思われます。日本の人口、および高い人口密度を考えていくと、もっとトランクルーム利用が増えていくのではないかと考えています。

すでに当協会会員が物件購入のお手伝いをしていますが、例えば、賃貸する場合に何か協会会員がお手伝いできますか。

もちろんです。何らかの関係を構築できればと思っています。会員会社からお客様をご紹介いただき、当社が紹介料を払うというのは考えられます。私どものお客様の3分の1が引っ越し関連でご利用になります。1~2週間という短期間でご利用なさる方もいれば、また海外への転勤に伴い1~2年のお留守の間の荷物を預けるという方もいらっしゃいます。住居賃貸の会社には、かなりご協力いただけるのではないかと思います。
キュラーズは、一番清潔で、もっとも安全な、一番便利なトランクルームだと思います。そういったことをお客様にご紹介いただければと思います。

本日は長時間にわたり貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

最後にスポーン社長から会員各社の皆様にお願いがあります。
「キュラーズ社と個別に提携契約を結んでいただき、お客様を紹介すると一定の紹介料をお支払いする取組みを行っています。是非よろしくお願いします」
スポーン社長のご提案に関心のある会社はFRK 事務局の福岡までお問合せください。

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