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成長が確実視されるアジアのセルフストレージ


“世界中どこでも人々は収納を必要としている・・・あとはそのことに気付かせればいい!“

Angus Miller, Big Orange Self Storage

アジアはセルフストレージ成長の中心地です。この地域における共通点、相違点、投資機会を見てみましょう。

共通点

今では確立されている香港、シンガポール、日本といったアジア市場ですが、2000年代初頭に事業者が最初に参入したときは、セルフストレージが実行可能な選択肢かどうか判断するために、何らかのガイドラインを参照したことでしょう。人口に占める中産階級の割合、人口密度の高さ、居住スペースの狭さ、セルフストレージに適した場所も調べたでしょう。これらは全て市場参入には有効なデータであり、かなり大きな投資を伴うビジネスに間違いなく必要な情報です。ですが、それから10年と少しが経過した今、アジア市場の事業者の多くは、ほかの国のセルフストレージと何ら違いはないことを実感しています。もちろん、セルフストレージビジネスの立ち上げに関する標準的なガイドラインは全て当てはまるのですが、アジアの人には次の要素も必要だというのが実情です:

  • 結婚、出産、死亡、リフォーム、引越といったライフイベントがきっかけとなる一時的な収納
  • スポーツ用品、趣味、収集品、ワインコレクション、季節の衣類などのためのより永続的な収納
  • 法人にとっては過剰在庫や書類の収納として手頃な解決方法となる

誰もが皆、24時間アクセス、高水準のセキュリティ、豊富な収納サイズ、必要なときに収納が利用できる利便性を好みます。このように消費者ニーズは確かにあるのですが、欧米と比較すると、アジアの市場にはいくつか顕著な違いも見られます。

相違点:店舗規模

アジアとアメリカのセルフストレージを比較したとき、共通点と同じくらい多くの相違点があります。アジアでセルフストレージが登場してから最初の10年と、アメリカの最初の10年とを比較すると、明らかに違うことがひとつあります。それは、アジアには家族経営の小さな店舗がほとんどないということです。

香港

アメリカ最古のセルフストレージの草分けの概念にいちばん近いのが香港です。その理由は、個人事業者が経営する小規模な店舗が極めて多いことです。小規模店舗はまさに香港の典型ですが、これはStore Friendly(79店舗)、SC Storage(43店舗)、Apple Storage(19店舗)といった大手事業者にも当てはまります。というのは、これらの大手事業者は複数の店舗を経営していますが、その店舗の多くは建物の1フロアまたは2フロアだけをセルフストレージに改装したものなのです。一方レンタル可能面積が18,600平方メートル(200,000平方フィート)近くにおよぶBig Orange Self Storage Hong Kongは巨大企業で、香港基準からすると例外的な存在です。

シンガポール

Big Orangeはシンガポールでも大型店舗を4ヵ所で運営しています。昨年までの数字では、1店舗あたりの平均レンタル可能面積は5,580平方メートル(60,000平方フィート)でした。このほかにもシンガポールには Extra Space Self Storage(5店舗)、Lock+Store(2店舗)、StorHub Self Storage(5店舗)といった事業者に加え、Big Orangeと同じ大型店舗モデルで1店舗のみ運営する事業者が4社あります。ですがこの1年ほどは小規模店舗の数が増えてきているため、1店舗あたりの平均レンタル可能面積が4,185平方メートル(45,000平方フィート)程度に下がってきています。

日本

日本のストレージモデルは他のアジア諸国とは異なります。というのは、街の中心部の以前はオフィスビルとして使われていた場所にストレージがあることが多いからです。建物あたりの合計レンタル可能面積は香港とそれほど変わりませんが、個々の収納スペースは比較的小さく、床がカーペット敷きであることもよくあり、収納スペースが自宅の延長のようになることから長期にわたり利用する人が多いのが特徴です。ストレージを追加クローゼットとして使い、季節に応じて衣替えをすることも一般的です。日本にはおよそ250の事業者がありますが、上位5社が日本の屋内型セルフストレージ市場の約60%を占めている状態です。45店舗を展開し20%の市場シェアを持つキュラーズは収益で最大手であり、その後にハローストレージ(16%)、ライゼボックス(12%)、寺田倉庫(5%)が続きます。

新たな市場

すでに定着している前述の3市場に加え、中国、マレーシア、フィリピン、韓国、台湾、タイといった新しい市場にもセルフストレージは存在しています。注目の国はやはり中国です。2300万人もの人が住む上海の例を見てみましょう。この近代的な(あらゆる意味で)資本主義都市で営業している12店舗のうち、実に9店舗が過去12-18ヶ月の間にオープンしたものです。このような成長が見過ごされることはなく、間違いなく急成長するとみられることから、現地の投資家が大きな関心を寄せています。

相違点:ユニットサイズ

さまざまなサイズの収納スペースをいかにうまく組み合わせるかは、どの事業者にとっても最重要課題です。アメリカの場合、どこの州でも同じ組み合わせという訳にはいきません。テキサス州の平均ユニットサイズとニューヨークのそれとはまるで比べものにならないからです。アジアにおいても、シンガポールに適した組み合わせが香港や日本でも通用するとは限らないという意味では、状況は同じです。ここで良い目安となるのが、住宅面積の10%を超えるスペースを借りる人はいないということです。そして、アジアの住宅はアメリカよりもはるかに狭いことから、必然的にユニットサイズもずっと小さくなり、シンガポール平均5.4平方メートル(58平方フィート)から東京平均2.5平方メートル(27平方フィート)の範囲となります。

相違点:ブラウンフィールド(何らかの要因で再利用されていない土地/施設)

アジアと欧米との比較で、明らかに異なることがもうひとつあります。それは、ほとんど全ての施設が、セルフストレージへの改装に適した既存の建物内に作られていることです。アジアではセルフストレージ専用に建てられた施設はめったにありません。その理由は、セルフストレージがビジネスとして成り立つ場所は市街地であることが多いため、単に新たに施設を建てる土地がないのです。商業ビルや工業用建物で、もはや本来の用途では役に立たなくなり、またかつては郊外でありながら今では住宅地となった場所にあるものは、セルフストレージへの転用にうってつけです。

事業者が建物を購入する場合、1フロアまたは2フロアだけセルフストレージに改装して、他のフロアの既存テナントをそのまま残しておくことも珍しくはありません。つまり、初日から賃貸料収入があるので、オーナーは施設を早く満室にしようと焦らないで済むわけです。セルフストレージの稼働率がある一定の割合に達したら別のフロアのテナントを退去させるというやり方で、フロア単位で施設を拡大していきます。

また、事業者がセルフストレージ施設用に建物やフロアを賃借することもよくあり、大抵の場合長期契約しています。では、賃貸借契約期間が切れるとどうなるのでしょうか?何とか契約の再交渉をするか、近くに引っ越すかのどちらかです。

セルフストレージ市場統計

セルフストレージデータ アメリカ オーストラリア イギリス ヨーロッパ
(イギリス以外)
日本 シンガポール
事業者数 - 925 400 - 246 14
セルフストレージそう施設数 50,048* 1,425 815** 882*** 1,898 28
施設あたりの平均ユニット数 ※ 566 186 534 - 72 725
施設あたりの正味面積 ※ 4,754
(51,119)
1,802
(19,375)
3,378
(36,319)
3,720
(40,000)
278
(2,990)
357
(3,836)
総ユニット数 28,320,000 265,000 435,294 - 136,318 19,600
賃貸総面積 ※ 2億3715万
(25億5000万)
2,566,800
(2760万)
2,752,800
(2960万)
3,282,900
(3530万)
- 995,100
(1070万)
平均ユニット面積 ※ 8.4
(90)
9.5
(102)
6.3
(68)
- 2.5
(27)
5.4
58
1人あたりの平均賃貸面積 ※ 0.69
(7.41)
011
(1.2)
0.04
(0.48)
0.007
(0.08)
0.003
(0.029)
0.02
(0.22)
人口 3億1440万 2270万 6330万 4億2070万 *** 1億2760万 520万
* アメリカのセルフストレージ部門の上位10社が市場に占める割合は10%に過ぎず、上位50社でも15%である。 上位企業は主に中小事業者の買収と新規開発との組み合わせにより成長を遂げている。アメリカのセルフストレージ産業の大部分は家族経営の小規模店舗である。
** イギリスのセルフストレージ施設のうち320店舗は大手事業者(10店舗以上を運営)である。
*** 20ヶ国以上に広がる。
※ 平方メートル
※()内数字は平方フィート
出典:
1.[USA] 2012 Self-Storage Almanac
2.Self Storage Association of Australasia (2012)
3.The Self Storage Association UK Annual Survey 2012
4.株式会社キュラーズによる市場調査 (2011)
5.Steel Storage Asia Pte Ltd (estimate September 2012)

アジアのセルフストレージに投資?

統計を見ただけでも、投資や成長の機会があることがわかります。アジアの既存の市場においては、M&Aの動きも起きており、すでに数億ドルの取引が完了しています。アジア、特に新市場におけるセルフストレージビジネス立ち上げの最大の難関は、セルフストレージを知ってもらうこと、すなわち認識を促すことです。ニーズはあるのですから、それをどのように生かすかはあなた次第です。

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