トランクルームマーケット情報

成長を続ける日本のセルフストレージ市場


世界で急速に成長しているセルフストレージ市場のひとつが日本です。施設は着々と増え、国内セルフストレージ業者の利益を代表するレンタル収納スペース推進協議会(RSA)という団体が存在しています。RSAは2010年10月28日に一般社団法人化され、同協議会のウェブサイト(ww.rentalspace.org) によれば、国土交通省が承認する唯一のセルフストレージ連盟です。

6月にRSAの年次総会が東京で開催され、会員企業から26名が出席したほか、ゲストや記者も10名以上が集まりました。代表理事の多田氏による開会の挨拶に続き、ゲストスピーカーである国土交通省の稲本氏が話し、さらには日本最大の市場調査会社である矢野経済研究所が日本のセルフストレージ業界に関する調査報告書を発表しました。

キュラーズ トランクルーム 館内ユニット

RSAは今年、米国で業界リソースの提供と教育に取り組むInside Self-Storage (ISS)とパートナーシップ契約を締結しました。このパートナーシップには、ISSマガジンや毎春ラスベガスで開催されるセルフストレージ・ワールド・エキスポでのコラボレーションが盛り込まれています。RSAマネージングディレクターの佐治龍哉氏をはじめとする連盟代表は、4月3日からParis Hotel & Resortで開催される2013年カンファレンスに出席予定です。このイベントでは、日本のセルフストレージを取り巻く状況について話し合う教育セッションが日本語で行われる予定です(英語への通訳つき)。

日本の事業者が直面する課題

日本のセルフストレージ産業はまだ初期の段階にあり、一般消費者や金融機関にとっては比較的新しい存在です。ですがこのビジネスは、特に東京や大阪といった大都市において、ゆっくりと着実に成長しています。日本の事業者が直面している課題の多くは、かつて米国も経験したものですが、その中でも最も大きなもののひとつは消費者がこのサービスに気付いていないこと、つまり認知度不足です。日本ではセルフストレージが「トランクルーム」、「収納ボックス」などと呼ばれていますが、佐治氏によれば、これはユニットのサイズが米国よりもかなり小さいからだそうです。日本の人々はセルフストレージとは何かを知ってはいるものの、その有効な使い方を知らないというのが現状です。

また日本の事業者は、法的な課題にも取り組んでいます。事業者の多くは1991年の「借地借家法」に基づく賃貸契約を利用していますが、佐治氏はこれを「賃借人をより一層保護するために制定された法律である」と2011年にISSに寄稿した記事の中で述べています。滞納の解決を先送りすることも珍しくありません。その代わりに事業者は、法的な紛糾を避けるためユニットの中身を移動したり、長期間保持したりします。さらに、賃貸契約は事業者によって大きく異なります。RSAは事業者の保護のため、これらの契約書の標準化に取り組んでいます。

キュラーズ トランクルーム 収納例

認知度不足は、資金調達やマーケティングの面でも問題です。このビジネスに投資家が新規参入するのが難しいのは、ほとんどの金融機関がセルフストレージを認識していないか、または十分な知識を持ち合わせていないためです。東京の大手銀行はプロジェクトファイナンスを考えるかもしれませんが、金利は他の不動産プロジェクトよりも高くなるでしょう。レンダーや投資家は新規案件に対し、高い信用と保証を求めるものです。

さらには、貨物運送用コンテナをストレージユニットとして使っているセルフストレージ施設が今も数多くあります。投資額が少ないため、利益が上がることが多いからです。利用料は安いのですが、従来型のセルフストレージにあるセキュリティ機能を備えていません。それでも、コストに敏感な消費者の多くは、この2種類のストレージを区別することができずにいます。日本の事業者は、土地利用規制が強化され、コンテナ施設の建設・営業場所が制限されるようになることを望んでいます。

主要事業者

日本の最大手であるキュラーズのスティーブ・スポーン社長によれば、世界の他の地域のセルフストレージ市場と比較すると、日本市場は収益ではかなり大きな市場ですが、市場浸透度から見ればまだこれからの市場です。2010年に実施した同社の調査では、この10年間供給量は増え続けており、今後も年間10%程度の成長が続くとしています。

成長に拍車を掛けてきたのは、ストレージ施設の改善と製品に対する認知度の向上です。2008年第3四半期から2010年第3四半期の間に、ユニット供給量は19%増加しました。キュラーズ、エリアリンク(ブランド名:ハローストレージ)、ライゼボックス、加瀬倉庫、寺田倉庫の上位5社で市場の60%を占めています。

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日本におけるセルフストレージ運営には3種類のビジネスモデルがあります。スポーン氏によれば、キュラーズは十分に活用されていなかったり、立地が悪かったりするオフィスビルを購入し、セルフストレージに用途変更する「コンバージョン(改装)モデル」を追求しています。エリアリンクの場合は、オフィスビルの1フロアまたは複数フロアをリースしてストレージユニットを設置し、そのスペースをまた貸ししています。都市部の不動産は価格が高い上に供給が少ないこともあり、この「リースモデル」は日本で最も普及しているモデルです。もうひとつの「ライゼモデル」は、土地の所有者がライゼボックスと契約して2階建ての施設を設置し、そのアセットを所有者に代わってライゼが管理するというモデルです。日本国内のセルフストレージは、25%が事業者による所有、50%が事業者によるリース、25%が事業者による管理となっています。

キュラーズ トランクルーム 渋谷富ヶ谷店

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